前回、漢方薬の剤形について書きましたが、それぞれメリット・デメリットがあります。
色んなことを知った上で、自分に必要な剤形を希望しましょう!
まず、エキス製剤のメリットとしては
・煎じる手間がかからない
・味も香りも煎じ薬ほど強くないので、苦手な方には飲みやすい
・保存や携帯に便利
・一般の病院でも処方してもらえることが多く、健康保険が適応できる
デメリットとしては
・煎じ薬と比較すると効果が弱い
・製薬会社が決められた処方(漢方薬の名前:葛根湯など)を作っているため、種類が限られる
次に、煎じ薬のメリットとしては
・漢方薬本来の効果をひきだせる
・エキス製剤と比較して処方の種類が多い
デメリットとしては
・煎じる手間がかかる
・味や匂いが独特
・持ち運びや保存がしにくい
※ただし、現在では寿元堂薬局で煎じた煎じ薬をアルミパックに詰めてお渡しできるため、これらの問題は解決できます。アルミパック関してはまた別の記事で紹介します。
こうして箇条書きにすると手軽なエキス製剤に心が動いてしまいそうになりますが、やはり1番大きな差は効果の違いでしょう。
最近、煎じ薬でもエキス製剤でも処方(漢方薬の名前:葛根湯や抑肝散など)が同じであれば効果が同じと思っている方が本当に多いのですが、問屋さんの中には、エキス製剤を2倍、3倍飲んでも煎じ薬の効果には及ばないだろう、と言っている方もいらっしゃるほど。
私の漢方の師匠が修行していた頃は、「葛根湯は原則として妊婦に飲ませてはいけない、飲ませたとしても非常に慎重に経過を観察しながら飲ませなければいけない」という風潮だったようです。
それがいつの間にやら、「葛根湯は妊婦の風邪薬」として、妊婦さんに葛根湯のエキス製剤が処方されることも多くあり師匠も大変驚いたそうです。
それでも妊婦さんに不都合なことが起こるなどの問題になったことはありません。
このようなことからも、煎じ薬とエキス製剤の効果の違いがわかりますね。
ネット上でエキス製剤と煎じ薬の効果は同じと書かれている情報を見かけたことがありますが、寿元堂薬局での経験ではエキス製剤と煎薬の効果には差があります。
病院で処方されたエキス製剤では効果のなかった方に、そのエキス製剤と同じ種類の煎じ薬を飲んでいただいて効果があったというお客様も少なくありません。
寿元堂薬局には色々な病院を回ってどうにもならない方、西洋薬で症状が改善しているけど西洋薬を長く続けたくない方、純粋に漢方薬に興味のある方など様々な方々がいらっしゃいます。
その中でも西洋医学で対応が難しいお悩みをお持ちの方は、エキス製剤の効果では症状に効果が届かない場合も多く、煎じ薬を飲んでいる方が大半です。
もちろんエキス製剤で驚くような効果が見える敏感な方もいらっしゃいますので、そういう方には煎じ薬は必要ありません。
最近の私の実体験をお伝えすると、鼻水がだらだら垂れてくしゃみがひどい花粉症の症状に小青龍湯(しょうせいりゅうとう)という漢方薬を試してみましたが、顆粒剤では効果はありませんでした。
しかし、煎じ薬だと服用して10分後には症状がぴたっととまるほど良く効きました!!
でも、手足の冷えが強い人に適することが多い当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)では、煎じ薬までいかずとも顆粒剤でも十分に効果を実感できました。
このように同じ人間でも症状によって煎薬の効果が必要な場合、顆粒剤の効果で事足りる場合と様々です。
自分に合った剤形、必要な効果をもつ剤形は専門家に相談してから試してくださいね。
ただ!注意していただきたいのが、剤型が煎じ薬だからと言って、一概に良いわけではありません!
漢方薬の効果の決め手は、主に剤型と生薬の品質の良し悪しの2つによって大きく左右されます。
今日お伝えしたのは、あくまで品質の良い生薬を使ってつくられた煎じ薬とエキス製剤での比較です。
あまり良くない品質の生薬でつくられた煎じ薬と、品質の良いエキス製剤で比較した場合は、もしかしたらエキス製剤の方が効果があるかもしれません。